ハナウタ
…―彼は、確か―…



僕が一緒に教科係をすることになった柏原君と並んで、女子に絶大な人気をほこる男子、蒼岸 廻(アオギシ カイ)。

物静かで柔らかい笑顔が印象的な柏原とは対象的に、目付きはきついが人懐こくてよく騒ぐ。



彼は僕の視線を気にする風もなく一緒に入って来たクラスメートと笑い話をしながら席についた。




「カッコイイよね。蒼岸君」

「え?」



横にいる少女を見ると、人形のように大きな瞳をらんらんと輝かせて僕を見ている。


「好きなんでしょ?
蒼岸君のコト」

思いもよらない問いに思わず僕は目を丸くした。

そうか…やっぱり女の子だもんな。
恋の話なんて大好きだろうな。

僕はまた曖昧に笑う。










「どうかな、僕はその手の話に疎いからなぁ……多分、違うと思うよ」

それを聞いた彼女は、さっき僕がしていたであろうように目を丸くさせた。


「カヤチャンて…自分のコト"僕"って言うの?

女の子なのに?」



「あ、うん」












始業のチャイムが鳴る中、彼女は僕を物珍しそうに見ていた。
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