ハナウタ
「僕は、わかるだけだよ。
そう、口先、だけ…
何も…何もしてあげられない。
もう、怖がってしまったから…」




救いになんてなれる存在じゃないと訴えるように、
救いを求められるプレッシャーに耐えるように。

救いを求めるのは俺も、カヤも、きっと京介も一緒で、
何が救いなのか、何に苦しんでるのか、そもそも本当に苦しんでいるのかさえわからなくて。

でも何気ないような誰かの一言で、少し救われたような気持ちがしたりするから。
だから求めてしまうんだろう…




なお言い募る京介に、カヤは続けた。




「誰かに受け入れられて、誰かに拒否されて…
きっと、それで良いんだよ。
皆を受け入れる必要もなければ、皆に受け入れてもらう必要なんか…きっとないんだよ」





自分に言い聞かせるように、柏原に語りかけるように言ったそれは、俺の中でも、確かに血の通った重さを持っていた。

『綻びを許そう』と、それは京介への切ない提案で、俺への忠告で、カヤ自身への切望だったに違いないのだった。










「だから、もっと周りを見て…?
柏原を本当に理解したいと思ってる子…絶対にいるから。
…こんな事で、頑なになっちゃ駄目だよ」













届かなかった手紙を開くように、その言葉は泣きそうで、優しくて、必死だった。



カヤの言葉を受ける度に正気に戻っていく京介の目は、久しぶりにちゃんと俺を見て、その後もう一度カヤを見て…
涙を一粒こぼし、微笑った。




















「あぁ、本当だね」
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