ハナウタ
「俺とカヤは似過ぎてたんだ。
だからお互い一緒にいてもそれを恋に発展させる気がなかったんだ。
傷を舐め合うような関係を先まで続けたくなかったから」



いつかは立たなきゃならないのだから。


それに、木賀西は中学で二つの地域が一緒になってから知り合った境の事がずっと好きで、実はカヤもそのことは知っていて二人でよく境の話をしていたらしい。
境は、カヤの美術室での出来事を知った途端泣きながら木賀西に自分のした事を告白したそうだ。
そして、木賀西は境を許した。
「あいつさ、こいつの話するとき、本当に大切そうに話すんだ。
ヘマとか、失敗とか、自分が迷惑被ったような事でもそういうの全部ひっくるめてこいつだって……だから、俺もこいつのこと、嫌いになれなかった」

境を示しながら、切なそうに笑った。




「あいつの入院中に、一回だけお見舞いに言ったんだ」


カヤは木賀西に、「大丈夫だと思うけど、木乃を嫌いになったりしちゃ駄目だよ?原因じゃないとは言えないけど、それが全部だったんじゃないんだから」と、やけにきっぱり言った。





そしてカヤは、ぼんやり微笑った後、



『もうこんな風に疲れるのは嫌だし、楽しい方がいいな』




と、呟いたらしい。














世の中を、なんでもないように歩いている奴だった。
大概の悩みを、悩みとしないような奴だった。



でもそういう奴の方が、その身にある不安が大きいんじゃないか?


小さな悩みで吐き出せない不安は、そのちっぽけな身体に溜まっていくんじゃないか?







ある意味、しょうがないのかもしれない。
でも、今すごくカヤに会いたかった。
会って、触れて、俺がすぐ近くにいること、あいつがその場にいる事に、気付かせたかった。
気付いて欲しかった。
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