ハナウタ
「前にカヤに聞いた話なんだけど…」


ゆっくりと、境が口を開く。



「私の通ってた小学校に転校してくる前の学校で、友達らしい友達は一人もいなかったらしいの」






わかってほしくて、

わかってもらえなくて、

受け入れてほしくて、

拒絶される痛みを知った。







幼かった優しさは脆く、傷付きやすかったから、傷付けた奴らを憎まない事が出来なかった。

それでも憎み切れなかった。


嫌いだと言い聞かせてもその楽しげな輪が気になって、
困っているのを見ると手を貸したくて、
拒絶は何回されても苦しくて、
その度に自分がまた近付こうとしてたことに気が付いて、それが悔しくて…それなら最初からそんな事気にならない人でいたかった。





それなら多少の傷は平気になりたくて、優しく出来る強い心が欲しくて…















「カヤは、強くなりたかったんだろうなぁ」







きっと、その痛みすら受け入れられる強さが欲しかったんだ。

人は、誰かに、何かに支えられなきゃ立っていられない。



わかっていても、今までカヤを支える"誰か"はずっと現れなかったんだ。





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