ハナウタ
「カヤの絵…見たよ」
俺の言葉に二人は一瞬虚を突かれたような顔をした。
「懐中時計の…」と言うと、ようやく思い至って頷いた。
「あいつ、すごく幸せそうに話してたよ。
ほんと、大切そうに」
忘れられるように湖底に眠った街。
差し込む光と共に降り立った懐中時計。
誰も見ていないような淋しさも、
きっと誰かが見てる。
きっと誰かが居てくれる。
あいつにとって自分をちゃんと見てくれるのはこの二人だったんだろう。
自分の好きな二人が好き合ってる事は、本当に幸せで、一つの宝石のようにきらきらとした大切な存在だったんだろう。
その二人から離れた先で俺達と会って、信じたい自分と、もう人を信じたくない自分が対立して、あいつは俺の前から姿を消したんだろうか…?
「カヤを捜してくれてるのがあんたでよかった」
そう言って二人は淋しげに笑った。
きっと、この2人もカヤが好きで、自分達のした"ちょっとした間違い"をひどく悔やんでる。
あまりにも好きだったが、故に。
もう、2人が気に病むこともないだろう。