ハナウタ
昼休み
隣で九ノ月サンが女の子を集めて昼食の準備を始めた。
僕は、声をかけられる前にこっそり教室を出た。
静かに食べられそうな所を探してのんびり歩き出す。
すると、後ろからこちらに急ぐ足音と僕を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ?柏原君…」
「お昼、まだだよね?
よかったら俺達と一緒に食べない?」
俺"達"
という言葉に気付いて彼の後ろを見ると、そこには蒼岸君の姿があった。
「二人って幼なじみだったんだ?」
「うん。小学生から」
「ほんとなげーよなー」
案外人のいない屋上。
僕達3人はその一角に腰掛け昼食をとる。
学年1のお調子者と言われる蒼岸君と、学年1の優等生と言われる柏原君が幼なじみだと言うのは、聞いたばかりの時は少し驚いたけど、
並んで話をしながら二人を見ていれば、仲が良いのが何となく納得できる。
柏原君といる時の蒼岸君は、普段より少し大人っぽくなり、
蒼岸君といる時の柏原君は、普段より少し子供っぽくなる。
きっとそれが、二人の素なんだろう。