ハナウタ
それから、カヤの家庭の話を聞いた。
この街にあるカヤの実家は、家族内の仲は悪くないのだそうだ。

ただ、普段理解の広い母親は直情的なところがあり、一度怒るといつまでも相手をなじる性格だったらしい。

攻撃的になった母親の怒鳴り声は自分に向けてでなくてもそうであってもカヤにとっては凶器で、自分が生まれて来た事を悔やむくらい、傷付く事もあったんだそうだ。

自分の弱ささえなければ、そんなこともないのにと気付いていたとしても、心は脆すぎて集める端から零れたんだろう。

許したくても、傷ついてばかりの心では自身に説得力がないとわかってたのかな。


だから家族とも距離をとれる方法を肯定したんだ。








2人と別れた後、俺は人気のない海岸沿いの堤防を歩きながら空を見上げた。


目がちかちかしそうな程青い何もない空。

どこにいたって、あいつは同じ空の下にいる。








「絶対つかまえるからな、カヤ」
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