ハナウタ
しばらくたわいもない話をしていると、柏原君が時計を見て立ち上がった。



「ごめん。先生に呼ばれてるから行くね」

それから彼は「じゃ、また後で」と柔らかく笑うと屋上をあとにした。







ふと、視線を感じて顔を横に向けると、蒼岸君が無表情に僕を見ていた。

平生と変わらない僕の中で心臓だけが若干動きを速める。




僕も黙って見返すと、その妙な沈黙は少し続いた。











やがて、




蒼岸君はまた購買で買ったらしい焼きそばパンを頬張りながら沈黙を破った。





「なんか、印象よりマイペースなんだな。楠木って」


彼が普通に喋り出したので、僕も残りのお弁当をつつきながら返事を返す。


「そうかも」

「自覚、あるんだ」



声の調子が和らいだのを感じちらりと見やると、その端正な顔に笑みが浮かんでいた。


「変な奴ー」


その表情のままそう零す。
僕も思わず苦笑した。


「会って早々…失礼だなー」

それから僕らは、自分の事を少しと、新しいクラスメートの事を少し話して、予鈴を聞いてから教室に戻った。
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