君と桜と
いつの間にか先生が近くまで来ていてびっくりする。
どうやらさっきのは、先生が出席簿で三谷君を叩いた音らしい。
「授業始まってすぐ寝るアホがいるか。」
「・・・・・・」
「ちゃんと聞いてないと、テストのときに痛い目みるぞ。」
かったるそうに起き上がる三谷君に、今年入ったばかりの若さ溢れる古典の先生はニヤリと笑って教壇に戻って行った。
「他のやつらもちゃんと聞いてないと、抜き打ちテストするするからな。」
クラスのみんな口々に文句を言い始めて教室は騒がしくなる。
「・・・くだらね」
ぼそっとつぶやいた三谷君の声は低く冷たかった。
窓の外を見つめる後ろ姿からは、昨日見た優しさは感じられない。
それどころか、他人を拒絶するような感じさえする。