君と桜と
「じゃあ、シーン3から!」
監督の子がテキパキと指示を出す声が窓越しに外まで聞こえてきた。
どの教室からも、作業をする賑やかな音が聞こえてくる。
奈緒のいる、この木の下は、取り残されたかのように静かだ。
今の奈緒には、ぴったりの場所だ。
だけど、
私も行かなきゃ。そろそろ出番が来る。
のろのろと立ち上がった時、
聞こえてきたひとつのセリフに、思わず動きを止めた。
「――そうだ、信じてみよう。
信じる心があれば、僕は強くなれる。」