君と桜と



奈緒は舞台にあがって言葉を紡ぐ。




「――では、私も貴方を信じましょう。
無事に帰ってくると。」





最後の方は無意識に客席に座る隆司を見つめていた。



「奈緒っ
そこは客席じゃなくて相手を見ないと!」


「あっ・・・ごめん。」



「じゃあ次のシーンから。」



ふっと視線を戻すと隆司は肩を震わせて笑っていた。



ひどい、ひどいよ!



昨日まで目も合わせてくれなかったくせに!




・・・それは、違うか。


私が避けていただけだもんね。



ごめんね、隆司。




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