君と桜と
・・・どうして?
どうしてあんな優しい表情ができる人が、こんな冷たい声を出せるなんて。
昨日のは、何だったの?
今日は機嫌が悪い、とか?
学校が嫌い、とか?
昨日の隆司と結衣のやり取りを見ていなかった奈緒は、学校での隆司の態度にただただ混乱するばかりだった。
頭を抱え込みたいような大問題だ。
それほど、公園での隆司が印象的だったのだ。
新しい学年が始まると、最初はみなクラスの空気に馴染むのに精一杯で、どうしても気疲れしてしまう。
奈緒にその気がなくても、クラスの女の子たちは自分にあったグループにはやく落ち着いてしまおうと、水面下で駆け引きが繰り広げられるのだ。
奈緒はそんな同級生たちとは違い、落ち着いた自分の世界をもっている隆司に、自然と興味をもちはじめていた。