君と桜と


「それで、奈緒はこんなところに来てどうしたの?」


隆司は奈緒の隣に並んで、階段の手すりに寄りかかった。


「本番前に、外の空気を吸っておこうと思いまして。」


教室で並んでい座っているのと同じはずなのに、場所が違うだけで少しドキドキしてしまうのはなぜだろう。


「人たくさん集まって来たもんな。確かに空気は悪い。」


ふむふむ、と頷く隆司。
てっきりからかいにきたのかと思っていたので、拍子抜けしてしまった。



「うちのクラスに人が集まってる理由、知ってる?」


「あー、坂城目当ての女子が沢山来てたな。」


「ふふ、正解。坂城君ったら今まで気づいてなかったんだよ。」


「あいつ度天然だからな。」



「あ、やっぱり、隆司から見てもそうなんだ!」



「そして俺はもうひとつ面白い事に気づいた。」


「なあに?」



隆司がやけに得意気にそう言った時点で気づいてもよかったのだ。
奈緒はとんでもない墓穴を掘っていたということを。






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