君と桜と


「・・・やっぱり、何かあった?」


そう言って振り返った隆司はやっぱり心配そうな顔をしていた。


なんで。
なんで、人が気をつけようと決心した途端に優しくするの?





今優しくされたら・・・




「・・・心配させちゃってるかな?

ごめんね。
隆司はなにも悪くないのに。」



「謝ることなんか・・・」



「きっとほら、天気が悪いから顔色悪く見えるんだよ、

ほんと、大丈夫だから。」



精一杯の笑顔を貼り付けて言い訳をする。


それでも、偽りの笑顔に、鋭い隆司が騙されてくれるはずはなくて。




「・・・俺に対して、強がる必要なんてないのに。」



「やめて。強がりなんかじゃない!」


まだ心配そうにしている隆司を振り切って、奈緒は教室を出た。






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