君と桜と
「奈緒、ちょっと、いいか?」
さあ、帰ろうか、と立ち上がりかけた時、いきなり後ろから声をかけられた。
この声は・・・
「り、隆司・・・?」
なんで中庭に・・・?
「加藤、ちょっと奈緒借りる。」
「はいはーい
あたしは教室帰ってるわ。」
「えっ・・・」
絢はさっきまで私より次の授業もサボる気満々だったよね?
目線で行かないで、と訴えるも虚しく流され、絢はなぜか楽しそうに帰ってしまった。
隆司は何も言わず、黙って絢が座っていた場所に座る。
チャイムが鳴り終ると、二人の間には沈黙が漂う。
普段は喋らなくても何も気にせずにいられるのに。
この時ばかりは沈黙が気まずかった。
私から何か言うべき・・・?
いや、でも隆司がここに来たってことは何か話があったんだよね?
「・・・」
「あ、あの・・・何か話でもあるの?」
「・・・いや。廊下からここにいるのが見えたから。
お前だけ授業サボるのずるいと思って。」
「え・・・?」
「ごめん、嘘。聞きたいことがあったから来た。」