君と桜と
「さっき様子がおかしかったから、奈緒も何か言われたんじゃないかと思って。」
やっぱり。ごめんね。私の嘘が下手くそだから。
心配をかけてしまった。
「・・・大したこと、じゃなかったよ。」
そう、ほんとに大したことじゃなかったんだ。
隆司を前にしてこれ以上分かりやすい嘘をついても仕方がない。
「・・・ならいいんだ。」
隆司は怒るでもなく、ただホッとしたように背もたれによりかかった。
「あ、」
「降り始めたな。」
ポツポツと雨が降りだした。
2人が座っているベンチは屋根の下にあるので、移動する必要はなかった。
今さら授業に戻るににもなれず、なんとなく2人ともそのままでいた。