君と桜と



「だから、俺に対して悪い、とか思わなくていいから。」


「でも・・・」


まさか、隆司はそこまでわかっているというのだろうか。
私が、できるだけ隆司に迷惑をかけないようにしていることを。



「気にしすぎなんだよ、奈緒は。」


「でも、私が考えてること、全部聞いたら、きっと後悔すると思うよ。」


なんて、この期に及んで可愛くないことを言ってしまう。
それでも、そんなことを気にもとめずに、隆司はいつもの涼しげな笑みを浮かべるんだ。


「そんなの、聞いてみないとわからないじゃん。」


たった一言で、いつも奈緒が閉じこもっている殻を壊してくれる。
なんて不思議力なのだろう。


遠慮しすぎていては、友達といえど距離は縮まらないだろう。
本音を言い合ったり、辛い時に支え合ったり。



絢とは自然に築けているそんな距離感で、隆司ともやっていけるのかな。



「隆司は、すごいね。」


「え、なに、いきなり。」


クールな隆司も、自分のことを言われると少し動揺するところとか。



もっともっと見ていたいな。



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