君と桜と
「あのね、わたし、またピアノ教室に通い始めたの。
隆司があの時、夢は友達のために叶えるわけじゃないって言ってくれたから、前に踏み出せたんだよ。」
あの時、言いたかったことをやっと伝えることができた。
「よかった。」
隆司の優しい笑顔が見れるのなら、それだけでいい。
それなのに、時々隆司の心の奥底に、小さな闇ようなものが見え隠れしているような気がするんだ。
「でも、奈緒。勘違いしないほうがいい。
俺はなにも特別なことなんて言えるようなやつじゃない。
前に進めたのは奈緒自身の力なんだ。」
「ううん、もし、そうだとしても隆司のおかげなんだよ。」
隆司の言葉は私にとって特別なのだから。