君と桜と
終了式の日
最後のホームルームの時間、クラスアルバムが全員に配られた。
この学校では卒業アルバムだけではなく、毎年クラスごとにアルバムを作ることになっているのだ。
そのホームルームが終わっても、結構な人数が教室に残っていた。
始業式の日のそわそわしたざわめきとは違い、打ち解けて、親しみのこもった話し声で一杯だ。
残っているみんなはお互いにメッセージを書きあっているけれど、奈緒は輪の中に入る気にも、かといってすぐに帰る気にもならず、自分の席に座っていた。
いつもは絢が部活に行く時に一緒に下に降りて帰ることが多いのだけれど、今日は部活の呼び出しですぐに行ってしまったので、帰るタイミングを見失ってしまった。
結局、話してくれなかったな。
空っぽになった一つ前の席をぼんやりと見つめる。
来年、クラス離れちゃったらこのまま、何も聞けないまま終わっちゃうのかな・・・
もしかして、2年生最後の今日、あの時の続きを話してくれるんじゃないかな、なんて期待があったのだけれど。
想像以上にあっけなく、隆司は帰ってしまった。
「じゃ、また。」
「・・・うん、またね。」
また同じクラスになれたらいいな、とかクラスが別れても話せるよね?とか。
言いたいことはあったのだけれど、どれも相応しくない気がして、結局何も言うことができなかった。