君と桜と


懐かしいな。


去年は教室に入って席に着いた時。隆司が恐い人なんじゃないかって・・・


でもそんなの勘違いで。


隆司は、言葉が足りないだけで優しい人だった。お茶目で笑い上戸なところもある、魅力的な人だ。




そんな隆司の近くで、今年も一緒に過ごせるならうれしい。




「3年間同じクラスだねっ奈緒っ」



「ねーっやったあ!」



勢いよく抱き着くと、いつも変わらず受け止めてくれる絢に、どれだけ助けられてきたことか。



「奈緒はあたしがいないと遅刻ばっかりだもんね。」



「これでも努力はしてるんですーっ!」


一応反抗してみるものの、本当に絢がいなかったら、ほぼ毎日チャイムと同時に教室に入る、今よりももっとひどかったかもしれない。


「そういえば・・・あれ?」


窓の方へ視線を向けるが、いつも早くから来て本を読んでいた隆司はいなかった。

教室を見回しても、どこにも見当たらない。



「隆司、まだ来てないんだ。」


「いつも早いのに珍しいよね〜
風邪でもひいたのかな?」


「うん・・・」


不思議に思ったものの、ちょうど担任の先生が入ってきたので、絢と一旦別れて、自分の席へ向かった。





どうしてだろう・・・

ざわざわと胸の奥が落ち着かない。











< 158 / 205 >

この作品をシェア

pagetop