君と桜と
懐かしいな。
去年は教室に入って席に着いた時。隆司が恐い人なんじゃないかって・・・
でもそんなの勘違いで。
隆司は、言葉が足りないだけで優しい人だった。お茶目で笑い上戸なところもある、魅力的な人だ。
そんな隆司の近くで、今年も一緒に過ごせるならうれしい。
「3年間同じクラスだねっ奈緒っ」
「ねーっやったあ!」
勢いよく抱き着くと、いつも変わらず受け止めてくれる絢に、どれだけ助けられてきたことか。
「奈緒はあたしがいないと遅刻ばっかりだもんね。」
「これでも努力はしてるんですーっ!」
一応反抗してみるものの、本当に絢がいなかったら、ほぼ毎日チャイムと同時に教室に入る、今よりももっとひどかったかもしれない。
「そういえば・・・あれ?」
窓の方へ視線を向けるが、いつも早くから来て本を読んでいた隆司はいなかった。
教室を見回しても、どこにも見当たらない。
「隆司、まだ来てないんだ。」
「いつも早いのに珍しいよね〜
風邪でもひいたのかな?」
「うん・・・」
不思議に思ったものの、ちょうど担任の先生が入ってきたので、絢と一旦別れて、自分の席へ向かった。
どうしてだろう・・・
ざわざわと胸の奥が落ち着かない。