君と桜と



隆司、どうしたんだろう。





結局朝のホームルームが終わっても、始業式が始まる時間になっても隆司は来なかった。







やっぱり風邪なのかな・・・?



それとも、何か別な理由が?




奈緒は心配になって携帯を開く。



春休みの間、何度も話したいと思ったけれど、その度にメールを打っては削除して、というのを繰り返していた。


話の続きを聞けなかったこと、そして終業式の日に、手を振ってくれた時の表情がひっかかっていて、送ることができなかったのだ。

隆司は隆司で、何か考えているのだろうから、邪魔をしないようにしてきた。


でも、学校を休んでいるのはさすがに心配だから。



"隆司、久しぶりだね。
学校お休みしてるけど、大丈夫?"



明日は会えたらいいな。


最後に打ったその文は結局消してしまって。
可愛げのない、シンプルなメールを送信した。

メールだと、話す時以上に意識してしまって、変にとられてしまうようなことは書かないようにと、慎重になりすぎてしまう。


はあ、と小さくため息をついて、誰も座っていない前の席に目を向ける。



前の席が一つ空いているだけで教室が広く感じてしまうのが不思議だった。
















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