君と桜と
「今日はありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそありがとう。」
お母さんに見送られて玄関まで来ると、絢が歓声をあげた。
「わあっかわいいっ
名前何て言うんですか?」
昨日は気付かなかったけれど、庭に大人しそうな白い犬がいた。
「ケンっていうの。
大人しいから触っても平気よ。」
「お利口さんだね。
ほんとにかわいい〜っ」
犬好きの絢は近くまで行ってケンを撫でている。
「奈緒ちゃん」
はしゃぐ絢をぼんやり眺めていると、お母さんに呼び止められた。
「はい。」
「隆司が蘭のこと話さなかったことで、落ち込まないでほしいの。
きっと奈緒ちゃんに迷惑かけたくなかっただけだと思うわ。」
「そんな、迷惑なんて・・・」