君と桜と



カチャ・・・




「はーい

あら、奈緒ちゃん?そんなに慌てて、どうしたの?」


隆司のお母さんは、息が上がった奈緒をみて驚いた様子だ。


「よ、よかった・・・

あの、これを、渡したくて。」



奈緒は途切れ途切れにそう言って、お守りを差し出した。



それだけで奈緒の必死さは十分に伝わったのだろう。


お母さんは優しく、包むようにお守りを受け取ると、きゅっ、と胸元で握りしめた。


「・・・ありがとう。

蘭にちゃんと渡すわね。

あの子、きっと喜ぶわ。」




目を細めて笑うお母さんは、当たり前だけど隆司と同じ雰囲気で。


なんだか隆司まで喜んでくれているような気がしたんだ。




どうか、私たちの祈りが、届きますように。









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