君と桜と
その日の放課後も絢は部活で、いつもどおり1人で教室を出た。
校庭の桜の木の前で立ち止まり、真下から見上げてみる。
太く、立派な幹から沢山の枝が伸びている。そしてその先には、雄々しい幹からは想像のつかない儚げな花が咲いている。
奈緒は何かと慌ただしい四月は好きになれないけれど、この季節にしか見られない桜は好きだった。
しばらく桜を眺めて満足した奈緒が再び歩き始めると、何かがひらひらと降ってきた。
あれ・・・何だろう?
花びらにしては随分と大きいよね?
奈緒は大きな花びらのようなものが落ちた場所まで駆け寄っていった。
落ちていたものを拾い上げると、それは花びらではなかった。
「しおりかな?」
校舎を見上げると、ちょうど奈緒の教室の真下にいた。
開けたままの窓
時折吹く強い風
しおりは四つ葉のクローバーの押し花を挟んだもので、てっぺんには黄色いリボンが結んであった。
「もしかして・・・」
奈緒は急いで今来た道を引き返す。
きっと、三谷君のだ。
黄色いリボンになんとなく見覚えがあった。
いつも本を読んでいるから、これが無いと困っちゃうよね。