君と桜と

教室を覗くと、三谷君は落ち着かない様子で机の周りをうろうろしていた。
その姿からは怖さは感じられない。


何も考えず、勢いだけで引き返してしまったけれど、今の彼なら大丈夫。
不思議とそう感じられた。



奈緒は教室の入口に立ったまま、そっと声をかける。



「あの、これだよね・・・？探してるもの。」




顔を上げた三谷くんは、奈緒が持っているしおりを見て、ホッとしたように息をついた。



教室に入っていきしおりを差し出すと。
三谷くんはそれを大切そうに受け取った。



「これ、どこに？」



「えっと・・・私の足元に落ちてきたの。」



初めてまっすぐな視線を向けられて、奈緒は思わず目を逸らしてしまう。