君と桜と
そういえば、去年の夏休みに隆司と一緒に校舎内を走って練習を抜け出したこともあった。
懐かしい出来事を思い出して、自然と顔が綻んだ。
あと少し、あと少しで会えるんだ・・!
よろけるのも構わずに階段を駆け下りていく。
「おっと、危ないじゃないか、箕輪!」
「ごめんなさい!」
「謝るなら、走んなよ!」
「ごめんなさい!!」
途中ですれ違った化学の先生にぶつかりそうになってしまっても、奈緒は足を止めなかった。
さっきまでフラフラと力が入らなかったのが、嘘のように体が軽い。
靴を履きかえるのももどかしくて、奈緒は上履きのまま外に出た。