君と桜と


「ありがとう」



三谷君はそう言ってフッと表情をゆるめた。



夢の中の三谷君と同じ優しい表情に、奈緒はドキッとした。





「ううん。そんな、大したことじゃ、ないから。
あの・・・そのしおり大事なものなの?」


緊張でうまく言葉が出ないけれど、もう少し三谷くんと話していたい。
そんな風に感じていた。



「えっ?」



「今の三谷君、すごく優しい表情をしてるから。」



奈緒はもう本来の三谷君は優しい人だと確信していた。
そのためか、自然とそんな言葉が出てきて。


学校での冷たい態度にはきっと、何か理由があるのだろう。




「ああ。
これ、妹が作ってくれたんだ。」




三谷君は一瞬きょとんとしていたが、照れくさそうに頭を掻きながら教えてくれた。




「妹さんと仲いいんだねっ。」




奈緒は嬉しくて笑顔でそう言った。


今度は三谷君の方が恥ずかしそうに目を逸らしてしまう。




「まあ、それなりに。」



かわいいなあ。
だから始業式の日にためらいもせずに男の子を助けてあげてたんだね。









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