君と桜と
「・・・勝手に取るな。」
隆司は迷惑そうな表情を隠そうともせず、結衣から乱暴にしおりを取り上げて本に目を戻す。
「もう、相変わらず冷たいんだから。
せっかくまた同じクラスになったんだから仲良くしようよ!」
結衣は整った隆司の顔を見つめて甘えた声を出す。
そう、結衣と隆司は1年生の時も同じクラスだったのだ。入学当初から他のクラスメイトたちが隆司を遠巻きにする中、結衣は物怖じせずに隆司に話しかけていた。
しかし、隆司は親しい様子など一切見せず、本から目を逸らすことなくぼそっと言い放った。
「俺は仲良くしたいなんて言ってないけど。」
さも傷ついたという顔をする結衣を、隆司は気にする様子はない。
「・・・用がないならみんなのところへ戻れよ。」
「ひっどーい!!
あたし何も悪い事してないのにっ・・・そんなに冷たくすることないじゃない!!」
「結衣、あっちいこ。」
ああだこうだと文句を言いながら、先程からこちらの様子を興味津々に見ていた女子の集団へ戻っていく結衣と遥。
そんなふたりを尻目に、隆司は静かな時間を取り戻したのだった。