君と桜と
笑い上戸
「ええっなんで再提出?」
奈緒は返却された化学の実験レポートを見て思わず叫んでしまう。
「期末の勉強だってしなきゃいけないのに・・・」
新しい学年が始まって早くも2ヶ月が過ぎ、1学期の期末試験が間近に迫っていた。
試験は、奈緒が最も嫌いなものの一つだった。
窓際の席で日々心地よい風を感じている奈緒は、要するに、三谷君ほどではないけれど授業中の居眠りの常習犯なのだ。当然眠っていた分のツケはテスト前に回ってくる。
「二番目。」
「えっ」
気がつくと、三谷君が振り返ってこちらを見ている。
レポートを手渡す時に、奈緒の答案が目に入ったのだろう。
「間違えてる。」
「えっと、あの・・・?」
奈緒はしどろもどろになる。
三谷君に急に話しかけられたこととか、そんなことを忘れてしまうほど奈緒の頭の中はひとつのことでいっぱいになっていた。
ううっ・・
なんでこれが間違いなんですか!?
化学の授業では、実験をしたあとの残り時間で、結果をレポートにまとめることになっている。先週は時間が足りなくて、奈緒は授業のあとに必死に仕上げたのだった。
教科書とにらめっこしながら完成させたから、いつもよりは自信があったのになあ。
「はあ、また居残りかあ。」
奈緒は思わずため息をついていた。