君と桜と
「あやぁーっ聞いてよ!!
三谷くんったら、あたしから話しかけてあげたのに冷たく追い返したのよ!ほんっと失礼だと思わない!?」
幸せな気分に浸っていた奈緒のところへ突然よく通る高い声が乱入してきた。
その声の主は、隆司に冷たくあしらわれてご機嫌斜めの結衣だった。
「追い返されたって?てゆうか三谷くんって誰?」
元気の良さに圧倒されて何も言えないでいる奈緒とは違い、絢は普通に会話を進めていく。
「あの窓際で本読んでる人!去年私と同じ2組だったのよ。ほんっとに無愛想なんだから!」
「結衣を気にかけないなんて、珍しい人なのね。」
絢は肯定でも否定でもない返事をする。
「本当よぉ!
1年も同じクラスにいたのにあたしに興味すら示さないなんて・・・」
納得いかない顔のまま、結衣は嵐のように去っていった。
「絢、もう友達できてるし・・・さすがだね!」
奈緒は結衣のかわいらしい外見に似合わない強い物言いに驚いて、さらに圧倒されていた。
そんな結衣とためらいもなく話せる絢にも感心していると、絢は意外な事実を話し始めた。
「今のは同じバレー部の結衣だよ。」
「あっそうなんだ!すごく可愛い子だねっ」
なるほど、部活に入っているとクラス替えがあっても知っている人の方が多いのかもしれない。奈緒がそんなことを考えていると、絢はさらに衝撃的なことを口にした。
「結衣はモテるよ〜
でも物事を大袈裟に言いふらす癖があるから、話すことをそのまま信用しない方がいいと思う。」
「そ、そんな信用しない方がいいって、部活の仲間なのに・・・。」
「まあそれ以外はいい子だから許してやって。
あ、担任来たよ」