君と桜と



準備のために机が片付けられている教室で、奈緒と隆司はどちらともなく窓際に椅子を置いて座っていた。
バスでついついいつも同じ席に座ってしまうような感覚に近いのかもしれない。



そしてなによりも、二人とも窓際が好きだということが大きかった。



作業や劇の練習の合間に、ぼんやりと窓の外を眺める奈緒と、いつものように本を読む隆司。
普段の学校生活と変わらない空間が、そこにはあった。



ただ一つ、いつもと違っているのは机が取り払われて、椅子が横に並べられていること。

ちょっとした違いだけれど、机の向こうの背中を見ていた時よりも、ぐっと近く感じる。


ふと横を見れば、隆司の顔を見ることができる。


文化祭の慌ただしさもあいまって、自然と言葉を交わすことも多くなった。

なんでもない話しをしていくうちに、二人の距離は確実に縮まっていた。



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