君と桜と


なるべく目立たないようにさりげなく教室の出口へ向かっていた時、

「おーい隆司!

今手ぇ空いてるかあ?」


廊下で作業していた坂城君が、開いているドアから顔を出して声をかけてきた。


「悪い。今忙しいんだ。」


三谷君は申し訳ないという表情を作っている。


ナイス演技!奈緒は心の中でガッツポーズをした。


「えーっ
さっきまで本読んでなかったか!?」


「それ、気のせいじゃね?」


うう、今のは苦しいよ、三谷君。


「嘘だぁ!こいつ来てからろくに作業してないぞ!!」



「こっちは暑い思いして頑張ってるっつーのに。」



「そうだ!三谷も大道具係だろ!」



他の男子も口々に文句を言い始めた。
やっぱり文化祭シーズンになるとぐっとクラス全体が親しい空気に包まれ、隆司に親しく声をかける人は格段に増えていた。






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