君と桜と
「・・・」
ドキドキはおさまらず、考えるけど話す事が見つからない。
教室では何も気にせずに話せるんだけどなあ。
でもなんとなく、沈黙が心地良いようにも思える。
三谷君も同じなのか、無言のまま自転車をこぎ続けていた。
風を感じ、ゆっくり移り変わる景色を眺めているだけで、無理に会話しなくても二人は十分楽しめた。
昼間の住宅街はまるで眠っているかのように静かだ。
時折、開いた窓からテレビの音が聞こえてきたりするけれど、しばらく人とすれ違わないでいると、動いているのが二人だけなのかもしれないと思えてくる。