君と桜と


自転車がこの地域で一番大きな公園の中で止まった。


奈緒はあれ、と首をひねった。


「ねえ。公園なら誰でも来たことあると思うよ。秘密の場所なんじゃなかった?」


「まあお楽しみに。」


相変わらず涼しげな表情の三谷君は一体どこへ行こうというのだろう。


この公園はお城の跡地に建てられたもので、石垣に囲まれているのが特徴だ。


この町でもわりと有名な観光スポットになっている。
地元民なら知らないはずがないこの公園に、秘密の場所なんてあるのだろうか。


三谷君は自転車を押してどんどん公園の奥に向かって進んで行く。


遊歩道は木に囲まれていて、葉が光をさえぎるので少し暗くてひんやりとしている。



白と緑のまだら模様になっている三谷君の背中を、なんとなく眺めながらついていく。



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