君と桜と


「少しだけ、悲しかった。」



「ん、どういうこと?三谷君、奈緒に何か冷たいことでも言ったの?
気が利かなそうだからな~。」


「ふふっ、絢ったら。そんなことないよ。」



いささか失礼な絢の発言に、思わず笑ってしまった。


いつも言葉少なでぶっきらぼうな印象のある三谷くん。
実際にじっくり話してみないと、その優しさに気づくことは難しいのかもしれない。



「そう?ならいいけど。
今度またこっそり抜け出すなら、私には言ってからにしてちょうだい。」



「それってこっそりにならないよね。」


「もう!反省してないでしょ~!
そんなこと言うなら今日奈緒が手伝わなかった理由、みんなにバラしちゃうからね!」


腰に手を当てて迫ってくる絢は大迫力だ。


「わわ、わかった!
反省してます!ごめんなさい!」


奈緒が慌ててそう言うと、見逃すのは今回だけだからね、と念を押して作業に戻っていった。




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