君と桜と
「わぁ〜っ!奈緒ちゃん、すっごく似合ってる!」
「かわいいっ」
衣装係の子に連れられて着替えてくると、クラスの女の子たちがほめてくれたけれど奈緒は曖昧に笑って返すだけ。
衣装はお姫様ドレス。
背中には大きなリボンがあって、とてもかわいかった。
でも、どうしても昨日の歌那ちゃんの姿を思い出し、自分と比べてしまうのだ。
夢を追い続け、着実に近づいている歌那ちゃんと
夢から目をそらして、過去に取り残された奈緒。
もういいのに。
ピアニストなんて、小さい頃の夢だし、
今の私には、関係のないこと。
――綺麗なドレスを着ても、ピアノの舞台にはたてないんだ。
わたしは、奈緒は、落ちこぼれだから。
こんな衣装着たって、意味なんかない――