君と桜と
急に息が苦しくなってきた。
朝からずっと、頭も痛い。
奈緒は何処へ行くともなしにふらふらと教室を出る。
「奈緒ちゃん、どこ行くの?」
誰かが呼びかける声がする。
――奈緒ちゃん、なおちゃん。ピアノやめちゃったの?
奈緒はパッとかけだした。
頭の中にこだまする声を振り払いたい一心で、足が向かうままに走る。
約束なんて、覚えてないよ。
やめて。歌那ちゃん。やめて――!
ドンッ
誰かとぶつかってバランスを崩してしまった。
ドレスの裾が絡まってどうにもならない。
あっ!!
転ぶ・・・!そう思ってぎゅっと目を閉じた。