君と桜と


急に息が苦しくなってきた。
朝からずっと、頭も痛い。


奈緒は何処へ行くともなしにふらふらと教室を出る。


「奈緒ちゃん、どこ行くの?」


誰かが呼びかける声がする。



――奈緒ちゃん、なおちゃん。ピアノやめちゃったの?



奈緒はパッとかけだした。

頭の中にこだまする声を振り払いたい一心で、足が向かうままに走る。



約束なんて、覚えてないよ。


やめて。歌那ちゃん。やめて――!


ドンッ


誰かとぶつかってバランスを崩してしまった。

ドレスの裾が絡まってどうにもならない。


あっ!!



転ぶ・・・!そう思ってぎゅっと目を閉じた。





< 77 / 205 >

この作品をシェア

pagetop