君と桜と
「・・・おっと」
近くで誰かの声が聞こえるけれど、急に走ったせいか目が回っていて、動くことができない。
しばらくじっと耐えていると、少しずつ落ち着いてきた。
そっと目を開けると目の前に三谷君の顔があった。
「・・・大丈夫か?」
ぶつかった相手は三谷君で、とっさに奈緒を支えてくれたようだ。
地面に本が落ちていた。
「・・・」
奈緒はゆっくりと頷く。
「まったく・・・驚かせんなよ。」
三谷君はそっと奈緒から手を離すと本を拾い上げる。
「動かないから具合でも悪いのかと・・・」
ぽたっ・・・
奈緒の目から涙が零れ落ちた。
ぽたっ
「お、おい!どこか痛いのか?」
奈緒が泣いているのに気づいた隆司は、心配そうに顔を覗き込む。
「・・・う・・・し」
「ん?」
「どうしようっ・・・!」
隆司は俯く奈緒に思わず伸ばしそうになった手をギュッと握り締めた。