君と桜と
・・・そんなの嫌だ。
そこまで考えていつもはっとするのだった。
「ほかの誰か」ってどういうこと?
優しい視線の先に映るのが、私だったら?
三谷くんと付き合えるのが、私だったら?
私は、本当にそれを望んでいるの・・・?
この感情は、すき、ということなの?
友達以上の感情なの?
今までどう過ごしていたかわからなくなってしまうほど、三谷くんの些細な言葉が気になって。
視線の先にあるものが気になって。
私は、どうかしてしまったのだろうか。
一度考え始めるとそればかりになってしまうから、
今回もそうなのかもしれない。
そう、きっとそう。
「なっちゃん、大丈夫?
なんか、心ここにあらずって感じだね。」
「あ、ごめん・・・セリフ、飛んじゃった。」
気づくと坂城君が心配そうに奈緒を見つめていた。
「疲れてくる頃だから、無理しなくていいんだよ。
監督さん説得して休憩もらおうか?」
「ううん・・!ほんと、大丈夫だから!」
純粋に心配してくれる坂城君の優しさに対して不甲斐ない気持ちが募る。
坂城くんも、クラスのみんなも劇のために頑張っているのに。
これ以上みんなの足を引っ張る訳にはいかない、と、奈緒は小さく首を振って心に抱えたもやもやを無理やり押し込めた。