君と桜と
「何やってんの?」
一人、悶々と考えながら衣装の仕上げの手伝いをしていると、廊下で作業していたはずの三谷君がやってきた。
「え、あああああ、なに?」
まさか、三谷くんのことについて考えていたなんて言えるわけがない。
不自然なほど慌てる奈緒に対して、三谷くんは奈緒の手元にあるものをじっと見て不思議そうな顔をしている。
「あっ衣装作りを手伝ってたとこで・・・
三谷くんこそ、看板作りしてたんじゃなかった?」
奈緒が考え事をしていたことに対して聞かれたわけではない、と安心したのも束の間、衣装のことについてもこれ以上追求されたら困る、とすかさず奈緒は話題をそらそうとする。
「それ、まさかドレスに付けるのか?」
「う、うんベールにつけるの・・・ってさりげなく話題をかえないのっ!」
自分のことを棚に上げて怒る奈緒のことは全く頭に入ったいないかのように、隆司はお花の飾りを見て絶句している。
事実それは形が崩れてしまって、とてもお花には見えないのだ。
「・・・どうせ不器用ですよっ。
女の子のくせにお裁縫もろくにできなくて悪かったですねっ・・・」
ああ。
このお花の出来の悪さの原因は、考え事のせいではなく、奈緒のもともとの不器用さのせいだった。
よりによって三谷君にコンプレックスがばれちゃうなんて。
箕輪奈緒、一生の不覚です・・・!
奈緒は観念して自分の不器用さを認めると、真っ赤になって俯いた。