君と桜と
「針と糸。」
「え?」
顔をあげると三谷君が手を差し出してこっちを見ている。
「直してやる。」
断る理由もなく、ニヤリと笑った三谷君にとりあえず針と糸を渡したけど・・・
裁縫なんてイメージがなかったけど、出来るのかな?
奈緒の心配を他所に、隆司は真剣な表情でお花を縫っている。
な、なんか裁縫をしてる時でさえ絵になってるんだけど。
しかも手馴れてる感じが・・・
「ほら。」
数分後、隆司は見事な花飾りを作りあげた。
「す、すごくかわいいっ!
ありがとっ!!どうやったらこんなに上手に作れるの!?」
「コツさえ掴めば」
あまりの驚きに、奈緒は一瞬、悩みのことを忘れてしまっていた。
背に腹は変えられない、ということなのか。
奈緒はすっかり隆司の裁縫技術に魅了されてしまっていた。
「お願い、教えて!!」
隆司は奈緒のはしゃぎように驚きながらも、丁寧に、かつ辛抱強く裁縫のいろはを教えたのだった。