君と桜と
あっ!先を越されちゃった・・・って、あれ前の席の三谷君じゃない!?
奈緒の学校の制服を着ているし、その後ろ姿は先程まで教室で見ていた彼にそっくりだった。
三谷くんはしゃがんで泣いている男の子の頭を優しく撫でている。
「転んで擦りむいちゃったんだね。おんぶしてあげるから、洗いに行こう。」
そう言った三谷君の声が聞こえてくるほど、お昼の公園は静かだった。
奈緒はこくん、と頷く男の子に向けた笑顔に、そして初めて見る三谷君の瞳に目が釘付けになった。
その瞳があまりにも優しかったから。
伸びすぎていて少し邪魔そうな前髪からのぞく、優しい瞳。
かばんをその場において男の子をおんぶしているその姿は、結衣ちゃんが言う‘無愛想’な三谷君とは程遠かった。
なんていうか、ものすごい柔らかいオーラが・・・
本当は、優しい人なのかな。
もしかしたら結衣ちゃんの勘違いかもしれないし。
うん、きっとそうなんだ。
奈緒はなんだか心が暖かくなるのを感じながら、そっとその場を離れた。