星の輝く夜に
プロローグ
「お父さん!」
少女は、満面の笑みを浮かべて、夜空の下の丘を走りながら、そう叫んだ。
その後ろを、父親がゆっくりと歩きながら後を追う。
「ねぇ、お父さん!おんぶして!」
少女は父親のもとへ駆け寄り、その両足に抱きいてくる。
「はいはい、分かったよ」
父親はその大きな手で娘の体を抱いて、その肩に乗せた。
「うわぁ、高い!」
少女は嬉しそうにそう言って、父親の頭にしがみついた。
「ほら、空を見てごらん。星がきれいだよ」
「本当だ!すごいすごい!」
父の肩の上ではしゃぐ娘に、父は嬉しそうに声をかけた。
「展望台まで行ってみようか」
「うん!」
人がまばらな展望台、噂によれば、あと1年以内に潰されてしまうらしい。
彼らは肩車をしながら、展望台の中へ入って行った。
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