星の輝く夜に
夜空を見上げて
不意に、彼は起き上がると、
窓のところへ近づいた。
窓を開ける。
開けると同時に、冷たい風が部屋の中へ入り込んでくる。
春の季節とはいえ、まだ風は冬の冷たさだけを纏っていた。
しかし、窓の外から顔を出して見上げれば、満天の星空がそこに広がっていた。
珍しく澄み切って晴れ渡る空に光る星々を、彼は瞬きすることなく眺めている。
吐く息は白い。
頬に当たる風は刺すように冷たい。
それでも、彼は窓を閉めずにそのまま上半身を乗り出して、夜空を眺めていた。
「・・・あ」
一人、そう言葉を零す。
「流れ星・・・」
深い色の空に、一筋の光が駆け抜けた。
彼は微笑みながら、無数の皺が刻まれている手を、夜空にかざした。
何光年もの距離にあるはずの星に、手を伸ばす。
届かないことを知りながら、彼は幾度となく、それを繰り返していた。