星の輝く夜に
突然の乗客
駅前にある、タクシー乗り場。
そこに、たくさんのタクシーの列ができていた。
その列の中に、彼が運転するタクシーもあった。
彼は、60に近い、中年の男性。
顔にも、手にも、皺が深く刻まれていて、実年齢より老けて見られることも多い。
目は落ちくぼみ、目の白い部分も、少し黄色くなりかけていた。
ここ数年は、体の調子も良くない。
だから、毎日働くこともできず、週に3日か4日働くだけで、
給料も、アパート代と光熱費と食費を引けば、
ほとんど残らない程度しか貰っていなかった。
この日も、彼は、会社にあてがわれたタクシーに乗って、
客待ちの為にタクシー乗り場で列をなしていた。
客を待っている間は手持無沙汰で、
駅の売店で買った缶コーヒーとスポーツ新聞を読んで、
暇つぶしをするくらいしかすることがない。
客が乗ってくれば、目的地まで連れて、また駅前の列へと戻る。
そんな繰り返しを続ける毎日。
この日も、そうなるはずだった。