星の輝く夜に
当ても無く、さ迷うように車を走らせていると、
不意に、
「その角を曲がったら止めてください」
と言われた。
彼は言われるがままに目の前に差し掛かった角を曲がり、
車を止める。
「料金は3000円です」
彼はそう言って清算を始めようとした、その時だった。
「単刀直入に言わせていただきます」
あまりに予想外のその言葉に、彼は思わず後ろを振り向いてしまった。
普段、乗客の顔など、ミラー越しで見るぐらいで、
直接見ることなど無い。
彼の瞳に映ったその人の顔は、雪のように白く、
黒く長い髪が印象的な女性だった。
年は、20代だろうか。
黒のパンツスーツに身を包んでいるせいか、非常にスマートな印象があった。
その女性が、白い肌に引かれた赤い唇を、ゆっくりと動かす。
「貴方の人生は、あと、24時間しかありません」
時が止まったような感覚が、彼を襲った。