星の輝く夜に
「意図、と言われましても、仕事ですから」
彼女は漂々とした態度で、そう答える。
その口ぶりは涼しく、特段感情はこもっていないし、
現に顔も無表情だ。
「ということですので、そうですね、
明日の午後8時が、貴方の人生のタイムリミットです」
人生のタイムリミット。
その言葉が、やけに彼の胸に突き刺さった。
「信じるも信じないも貴方次第です。
ただ、1つだけ、お願いがあります」
「お願い?」
怪訝そうな顔をする彼に向って、彼女は言葉を続ける。
「もし、貴方が死ぬ前に何か叶えたい望みがあれば、
何でも叶えてあげましょう」
「・・・望み?何でも?」
「えぇ。何でもです。世界征服でも良いですし、金持ちにもして差し上げましょう」
「・・・」
「でも、遅くともタイムリミットの1時間前に、私を呼び出してくださいね」
彼女はそういうと同時に、1代の黒い携帯電話を彼に差し出した。
思わず、彼はそれを手に取ってみる。
黒い、小さな携帯電話だ。
「通話ボタンを押すと、私に直接つながるようになっています。
願いが決まり次第、私に連絡ください。
特に望みが無ければ、連絡は不要です。
どこにいようとも、貴方は24時間後に死ぬ運命ですので、お迎えにあがりますから」
最後にうすら寒い微笑をたたえ、彼女はタクシーのドアを自分の手で開けた。
「あ、お客さん・・・」
彼は彼女を追いかけようと外に出て、彼女の歩く方向へと後を追ったが、
角を曲がった途端、彼女の姿は消えてなくなっていた。