恋する乙女
夢紫苑 2
夢紫苑 2
2週間後、『紫苑の花の人』は彼の友人(らしき人)と2人で図書館に現れた。前に借りた本の返却に来たのだろう。
不思議と2人を目で追ってしまう。
彼らに気を取られていたせいか、持っていた本を床に落としてしまった。
とっさに駆け寄ってくれたのは、彼ではなく友人の方だった。はい、と本を差し出してくれた。
『すみません…。』
拾ってくれた本を受け取る。その人は優しく微笑む。…この世のものとは思えない。
すると『紫苑の花の人』が口を開いた。
『ねえ…、』
低音だけど水のように透き通った声。
私は彼の声を初めてきいた。
『これ…この栞…』
彼が持っていたのは紫色した細く小さな栞。彼があの日手にしていた紫苑の花でできた押し花だった。
『あの、それは…』
『貰ってもいいかな。』
『え?』
『欲しいん…だけど。』
『あ、どうぞ。』
そっけない返事しかできなかったけれど、ありがとうと彼は小さく笑った。
心臓の音が聞こえる。私の胸の奥の鼓動が高鳴るのがわかる。
ああ。
これが[恋に落ちた]と言うものか…。
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夢紫苑 2 <終>
2週間後、『紫苑の花の人』は彼の友人(らしき人)と2人で図書館に現れた。前に借りた本の返却に来たのだろう。
不思議と2人を目で追ってしまう。
彼らに気を取られていたせいか、持っていた本を床に落としてしまった。
とっさに駆け寄ってくれたのは、彼ではなく友人の方だった。はい、と本を差し出してくれた。
『すみません…。』
拾ってくれた本を受け取る。その人は優しく微笑む。…この世のものとは思えない。
すると『紫苑の花の人』が口を開いた。
『ねえ…、』
低音だけど水のように透き通った声。
私は彼の声を初めてきいた。
『これ…この栞…』
彼が持っていたのは紫色した細く小さな栞。彼があの日手にしていた紫苑の花でできた押し花だった。
『あの、それは…』
『貰ってもいいかな。』
『え?』
『欲しいん…だけど。』
『あ、どうぞ。』
そっけない返事しかできなかったけれど、ありがとうと彼は小さく笑った。
心臓の音が聞こえる。私の胸の奥の鼓動が高鳴るのがわかる。
ああ。
これが[恋に落ちた]と言うものか…。
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夢紫苑 2 <終>