だけど、これは届かない
名前も知れたことだし、そろそろ帰りますか。
「じゃあ帰ります…はぁ学校嫌だー」
現実に引き戻される。
「大丈夫だよ」
「友達できなかったらどうしようー」
「伊藤さんなら大丈夫」
先生は私のこと
声大きいことしか知らないんでしょう?
でも、やっぱり嬉しい。
「まあ頑張って」
「うん、新人さんも頑張って」
「新人じゃないって」
「あ、そっか」
塾を後にした私は思いの外足取りが軽くて
横断歩道を渡ってから、自転車で来たことに気がついた。