恋した私の負け(短)
「かーなめっ、はよっス」
「……ス」
いつもの時間、いつものように彼は私の前の席に座る。
「今日も元気ねぇなぁ」
「低血圧万歳」
「ダメダメじゃん」
変わらない会話。
昨日のことも、今朝のことも、なかったみたいになにも変化がない。
「滝ーっ!」
教室に響いた声、ガタッと椅子が鳴る音。
そっと伏せてた顔を上げると、混乱気味に複雑な表情をしている彼。
視線の先には、彼女。
どうやらメイクは完璧に直しているようで、ドアの向こうで手を振っていた。